「太平洋のスラム」クワジェリンのイバイ島に旅行に行ってみた!

基本的に一般人が立ち入ることはない、マーシャル諸島のクワジェリン環礁、イバイ島。「太平洋のスラム」とも称されるイバイ島を訪れた。

米軍基地があるクワジェリン環礁とは(クェゼリン環礁)

別名、クェゼリンやクワジャリンと呼ばれる。世界最大級の環礁で、マーシャル諸島共和国の土地だが、アメリカが賃借して軍事基地として使っている。

第二次世界大戦時には日本の統治下だった。太平洋諸島がどんどん壊滅していった、飛び石作戦の序盤、ここでも玉砕と呼ばれるような戦闘があった。ここも隣国と同じように、日本の遺族にとって大切な場所なのだ。戦争でたくさんの人がなくなり、水爆実験という人類最悪の発明の実験場となり、そして今はアメリカ軍の弾道ミサイル基地がある。兵器や戦いに100年近く振り回されている場所なのだ。

https://mibfa1926.com/files/kansyou/kansyou_066.pdf

クワジェリンには空港があり、ユナイテッド航空のアイランドホッパーが唯一の定期便として止まる。使う空港は米軍基地の滑走路だ。そのため、機内からの撮影は一切禁止されており、アイランドホッパー特有の「飛行機から降りて、空港で休憩して、飛行機に戻る」ということもクワジェリンではできない。

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クワジェリンにある米軍基地の名前は「ロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛試験場」。大きなアンテナや燃料タンク、格納庫、綺麗に舗装された道路、軍人の居住区などがあり、バーガーキングなども基地内にあるらしい。

参考: クェゼリン環礁 - Wikipedia

マーシャル諸島のイバイ島とは(エバイ島)

エバイ島、とも言われる。イバイ島はクワジェリン環礁の中で最大の人口の島。基地の横にある島で、ほぼ全員がこの島に住んでいる。島民の一部は米軍基地に関する仕事をしていて、船で基地に通勤する。正確な人口は不明だが、15,000人が幅200m、長さ1.5kmくらいの細長い島にギュウギュウになって住んでいる。世界でも人口密度が最も高い場所の1つ。

島民の一部はフィリピンからの出稼ぎ。病院関係の仕事をしている人が多い。また、ビキニ環礁で行われた水爆実験により、移住させられた人たちも住んでいる。

人口過多、農業も畜産もできない、輸入に頼った生活、などから「太平洋のスラム」と言われることもあるらしい。たしかに、ぎっしり詰まった家々、剥がれた道路の舗装を見ているとそんな風に見えてくる。

Google マップ

クワジェリン環礁、イバイ島に行ってみた!

青年海外協力隊の同期がイバイ島で栄養士として活動しているので、遊びに行ってみた。一般的に訪れる場所ではないので、この機会を逃したらいけない。良い機会に恵まれた。先に結論から言ってしまうと、本当になにもなかった。業務出張者以外はこないので観光地も皆無。ユナイテッド航空アイランドホッパーの高い運賃を払って行く価値は、正直ないと思う。行っても珍しいところに行った、という称号しか得られない。ただし、この歴史的にも地理的にも珍しい特殊な場所に降り立つことで太平洋の島々の違和感をより強く自分は考えられる場所だった。クワジェリン空港で降りる際には事前申請や書類などは不要だった。

クワジェリン環礁でのスキューバダイビング

結論から言うと、観光でクワジェリン環礁に訪れて一般的な手配方法でのダイビングは不可。沈船ダイビングポイントがあるが、現地にダイビングサービスはなく、基地内のダイビングサービスは基地内の人しか使えない。

イバイ島には設備が全くない。非公式でガイドをしている人がいる、という噂も聞いたが、真意不明。約2年イバイ島に住んだ、青年海外協力隊の友人も情報を集めてくれたが、何もわからなかった。

クワジェリン基地には米軍関係者専用のダイビングショップ「Kwajalein Scuba Club」がある。ここは個人が趣味でやっているようなお店のようだが、一般人や観光客は利用不可。

クワジェリン環礁に沈む、プリンツ・オイゲン(沈船ダイビング)

ビキニ環礁での水爆実験などの歴史的背景があり、戦艦長門など、沈船ダイビングの聖地の1つでもあるマーシャル諸島共和国。クワジェリン環礁にはドイツ海軍の重巡洋艦、プリンツ・オイゲン(Prinz Eugen)が沈んでいる。アドミラル・ヒッパー級の3番艦。艦隊これくしょん -艦これ- にも登場する船だ。

Google マップ

沈んでいる場所がGoogle Mapに登録されている。浅瀬に沈んでいるので衛星写真でも確認することができる。

一般人が普通にプリンツ・オイゲンには潜ることはできない。潜る方法は主に2つ。マーシャル諸島のダイビングクルーズで訪れる(ビキニ環礁のツアーに組み込まれていることがある)または 米軍関係者としてクワジェリン基地のダイビングショップを利用する。

プリンツ・オイゲン (重巡洋艦) - Wikipedia

マーシャル諸島ビキニ環礁 | BikiniAtoll | 沈船 写真 ダイビング | Pacific War Wrecks

クワジェリン空港、入国

写真撮影禁止なので、写真はないが、ここは本当にマーシャル諸島なのか?というくらい発展していた。後にマーシャル諸島の首都、マジュロにも行ったがマジュロよりも基地内は発展していた。アメリカの西海岸のような綺麗な海と、平屋で庭付きの集合住宅。日本と変わらないような綺麗な舗装道路にサッカーコートや綺麗な車、自転車。この太平洋諸島でも異常なくらい綺麗に発展していた。

着陸後、まずは入国審査。バスの待合室みたいなところに通されて、パスポートを渡す。荷物は別の場所に置いておいて書類を記入する。書類は特別なことはなく、パーソナルデータや滞在先、目的などだった。しばらくすると、パスポートが返ってくるので米軍が用意したバンに乗る。途中の倉庫で飛行機にあずけていた荷物を受け取り、船着き場へ向かう。この道中に車内から基地の様子を見ることができる。特別なことはなく、入国はスムーズだった。

空港からバンでクワジェリン基地の港に移動。フライトと船の時間が合っているわけではないので、少し待つこともある。特に審査などなく、待合室で待つ。

クワジェリン基地とイバイ島の移動

基地とイバイ島は米軍の船が往復しており、無料で乗ることができる。きちんとしたスケジュールが設定されているので、それをチェックしておこう。スーパーなどで貼られている。

船には現地人やフィリピン人が多い。みんなイバイ島から基地へ通勤しに行ったり、暇だから乗っているだけ。

移動は20分程度。

クワジェリン基地側の港の待合室には自動販売機やトイレがある。中でも感動したのが、アメリカンスタイルのハンバーガーショップがあった。マクドナルドみたいな。10ドル前後するが、作りたてのハンバーガーとポテトは美味しい。イバイ島旅行で食べた物の中で一番美味しかった。しかし、待合室内が冷房が効きすぎていてめちゃくちゃ寒い。

イバイ島、街の様子

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この写真でほぼ全てのイバイ島が写っている。この建物の密度がすごい。

島の南端にあるイバイビーチパーク。散歩するだけなら入場料などもかからない。整備されていて、綺麗な公園だった。

島は全体的に一応、道路舗装がされている。排水が悪く、雨が降ると水浸しだった。島の端は砂利道のこともあった。

アメリカ式の十字架が立つ墓地。これも島内にいくつか見れるが、土地がないのだろう、すごい密度だ。最近はもうこの島に作れなくなって、隣の島に墓地を作るようになったらしい。

アメリカの基地があるからか、支援も入っているようで、綺麗なコートがあった。

クワジェリン基地への港では釣りをしている人がいた。なにも釣れていなかった。

貧富の差があるのか、綺麗な家をいくつか見かける。

しかし一方で、現地人が住んでいるのはトタンと板張りの家ばかり。

家と家の間はめちゃくちゃ狭い。しかし、区画整理されているわけではないので、こういう狭い道や、雨水タンクの下をくぐったり、信じられないようなところを通って人の家にいく。まさにスラムのような景色だ。しかし、全体的に清潔感はあり、アジアに比べると臭いは気にならなかった。

日本の支援で建てられた学校。宗教はほぼ全員キリスト教。

もちろん、ごみ問題も深刻。整備されていないビーチはすごく汚い。

ゴミ収集車を何度か見かけたし、街中でゴミが落ちている様子はあまりなかった。

まぁ、でも結局そのまま海沿いに捨てる、というか置いているだけ。この埋立地?もいつか限界が来るんだろう。

治安は悪くない印象を受けた。夜でも、あまり身の危険は感じないが、とにかく暗いし人が多い。人口密度の高さを感じる。

青年海外協力隊の同期が活動している病院。

マーシャル諸島は糖尿病患者が世界でトップクラス。それだけ不健康な食生活と運動をしない生活をしているんだろう。病院も支援で建てられたため、綺麗だった。

糖尿病患者が多いので、コーラなどの糖分を説明するパネル。

イバイ島のお店

まともな大きなスーパーマーケットは2軒。港の近くに向かい合っている。ペイレスは生鮮食品などの食品がメイン。トリプルJは衣料品などがメインで、フードコーナーがあり、コーヒーやアイス、パン、ドーナツなどが買える。

ペイレス

ビール、お菓子、生鮮食品などの食品が売られているのはペイレス。まぁ、普通のスーパーマーケットという感じ。物価は高く、日本の2倍~3倍が多い。品揃えはチュークより多かった。

トリプルJ

衣料品や生活用品がメイン。店内はけっこう綺麗で、チュークよりも物資が豊富だ。かといって特段欲しいと思うものはない。

お土産のTシャツも売られているが、、、ダサい。

学校の制服が売られていた。なんだかドラゴンボールみたいな配色。

イートインスペースあり。

ローカルのお店

他には島内を歩いていると、いくつかローカルショップが見つかる。台湾系の人も多いので、台湾系のお店もある。

イバイ島のホテル

イバイ島にはホテルが1軒のみ。

ホテルイバイ

Hotel Ebeye - Welcome

予約はホテルに直接連絡するしか方法はない。エクスペディアなどは非対応。かなり簡素なホテルらしく、古いビジネスホテルとかホステルみたいな感じかな。

トリップアドバイザーの口コミには「このホテルは普通は最低ランクの星1つをつける。しかし、島で唯一のホテルなので、どう評価していいのかわからない」と書いてあって笑える。

DIY

今回、俺は友人の滞在先に泊めてもらった。アパートメントなので事前に連絡すれば旅行者でも泊まれるかもしれない。

このアパートメントにはフィリピン人が住んでいたり、住民同士の交流があるようでそれも面白かった。フィリピン人看護師の家にお邪魔して、カラオケをした。娯楽のない離島で、同じ国の仲間とカラオケができるのは数少ない楽しみの1つかもしれない。ここで生活して、故郷の家族にお金を送ったり、自分の生活費を稼ぐのも簡単なことではない。

イバイ島のレストラン

イバイ島にはホテルは1軒。レストランは2,3軒しかないようだ。

イバイホテルのレストラン

イバイホテル併設のレストラン。島唯一のホテルに併設するレストランだが、正直大したことがなかった。選択肢がないので、味は仕方がない。Wi-Fiなし。ビール販売あり。

メニューはこんな感じ。高い!しかも選択肢が全然ない!

たしかこれはスイートサワーポーク(酢豚っぽいもの)かなにか。

ハンバーガーが無難な味。でもパティは真っ黒だな。

チキンカレー。日本風と書いてあったが、見たことないカレーが出てきた。チキンよりも明らかにタマネギの方が多い。味はあまり美味しくなかった。

Bojieレストラン

もう1軒、貴重なレストラン。かなりボロボロだが、味は美味しかった。

メニューはたくさんある。

できたてなので、美味しい。チキンフライや揚げ春巻き、ガーリックライス、謎のカレー、どれも美味しかった。

隣の島、グチグへ

天気が悪かったが、イバイ島から埋め立てられて陸続きになっている、隣の島まで自転車で行った。イバイ島の人たちはそこをグチク、と呼ぶ。風が強い時期なので、けっこうきつかった。1時間くらいかかった。イバイ島を出るとほぼずっと砂利道。

道中では捨てられた重機があったり、乗り合いタクシーとすれ違ったり。当然、お店などは一切ないので、水などは持っていかないときつい。

グチクへ到着。この辺りには人が住んでいて、学校もある。

唯一のお店でアイスを買った。汗だくで自転車をこいでいたので美味しい!何匹かいた犬がこわかった。

イバイ島とマジュロの動画

旅行中に撮った動画。ほとんどがマジュロの映像ですが、一応貼っておく。

イバイ島、クワジェリンでのダイビング

イバイ島にはダイビングショップはない。そのため、一般人はイバイ島でダイビングをすることはできない。調べると、クワジェリン米軍基地内にダイビングショップがあるが、それは米軍向けのショップで、一般人は対応していないそうだ。ビキニ環礁へのクルーズがイバイ島から出発することがあり、その場合はイバイ島周辺の沈船などでダイビングをすることができると聞いたことがある。

参考リンク

「大国の思惑通りにはならない」 反旗をひるがえした人口5万の島国:朝日新聞GLOBE+

青い海に浮かぶ楽園は「太平洋のスラム」だった! 人口過密、環境汚染、水・食料不足に苦しむイバイ島の異常な日常 | クーリエ・ジャポン