世界遺産に登録された教会とその周辺地域や国立公園の天草。長崎と鹿児島の間に位置していて、バスと船を乗り継げば旅の道中にも組み込める旅先。
今回はイーバイクで天草の西海岸を横断する1泊2日。鹿児島側から天草に入り、サイクリングツアーで移動し、長崎に抜ける天草横断の旅程は行って帰ってくる普通の旅行と違って、非日常感が増すので好き。
イーバイクでの移動は1日50キロくらい走っても全然つらくないし、想像以上に快適。車やバスの旅よりも自由で、自分のペースで楽しめる素晴らしい移動手段だった。
- バスと船で鹿児島空港から天草へ
- 牛深港の海の駅、海鮮丼は珍しい出汁をかけるスタイル
- イーバイクでサイクリングツアーに参加
- テントサウナがある天草レストハウス結乃⾥に宿泊。ご飯がとても美味しい。
- 夕食は地元⾷材を⽤いたバーベキュー
- 2日目は晴れ!絶好のサイクリング日和
- 入り組んだ地形に沿って⼤江天主堂へ向かう
- 天草西海岸の絶景を求めて、海岸線をライド
- 天草西海岸サイクリングコースのハイライト
- 富岡城・富岡城ビジターセンター⾒学へ
- 富岡港から船で長崎へ
- 意外と近い天草。長崎や鹿児島旅行に付け加えるのがオススメ。
バスと船で鹿児島空港から天草へ
初日は鹿児島空港からバスと船を乗り継いで牛深港まで移動。天草エアラインは欠航率が高く、陸路の移動の方が確実に行ける。天草に着くまで、コンビニは近くにないし、軽食を取れる場所も限られるので、空港で飲食は買っておくのがおすすめ。
鹿児島空港のレトロなバスチケット発券機。このボタン、押したくなる。
まずは出水駅へ。運賃は1,700円。ICカード決済可能。
9番乗り場から出発。
車内アナウンスはあるが、全ての停留所には留まらない。降りたい時は天井についているボタンを押す。
出水で出水・天草ロマンシャトルバスに乗り換え
出水駅で12時5分のバスに乗り換える。九州新幹線で天草に向かう場合はここから同じルート。
待ち時間が20分程度あったので、出水駅で弁当を買って食べた。
以前はレトロな古いバスで運行していたらしいが、故障して普通のバスになっていた。支払いは現金のみ。
蔵之元港からフェリーで天草、牛深へ向かう
自家用車が多い。ターミナルでチケットを購入。片道500円。所要約30分。支払いはPayPayか現金のみ。
三和フェリー - 熊本県の天草と鹿児島県の長島を結ぶフェリー
ゆったりした船内。大きな船なので、あまり揺れなかった。自動販売機のみ。
売店は閉まっていた。パンフレットが揃っているので、天草の情報収集ができる。
牛深港へ到着。ついに天草に着いた!
牛深港の海の駅、海鮮丼は珍しい出汁をかけるスタイル
牛深港に隣接する道・海の駅「海彩館」。
大きなバイクのツーリング客も見かける。
建物が吹き抜けで、かっこいい。
中央には水槽があって魚が見れる。この施設はテンション上がる。
お土産や観光案内所があり、2階にはレストランあおさがある。
支払いは現金のみ。
漁港に来たし、とりあえず海鮮丼かな、くらいの軽い気持ちで頼んだら、びっくり。ここの海鮮丼は珍しい。出汁つゆをかけて食べる初めてのスタイル。他の地域では見たことがない、牛深だけの食べ方。
出汁は雑節(ざつぶし)と呼ばれる、鰹節以外の節からとられている。むろ節、宗田(そうだ)節など、鰹節以外にも様々な魚の種類があり、これらを雑節と言うそうだ。天草に来て初めて知った。
この雑節の生産量が日本トップクラスの牛深港ならではの食べ方。雑節でとった出汁つゆを海鮮丼にかけて食べる。イメージはお茶漬けのような感じだが、出汁つゆで食べる新しい食べ方のスタイルに興奮。しかもめちゃくちゃ美味しい。醤油で食べるより断然美味しい。家でも麺つゆとかでやってみようと思う。
天草のシンボルの1つ、牛深ハイヤ大橋の真下に位置する。
資料館もある。天草で発掘されることが多い化石の展示や、漁業で栄えている牛深ならではの展示がある。
中でも面白かったのが釣具の展示。かなりたくさんの種類があって、ディテールなどを見るのが楽しかった。実際に使っている漁師さんに案内してもらったら、もっと勉強になりそう。
イーバイクでサイクリングツアーに参加
今回のツアーの主役イーバイク。電動自転車よりもパワーやバッテリー容量があり、1日走っても快適。車よりも自由がきくので、レンタカー移動よりもアクティビティとして面白い移動手段。
ヘルメットなどを装着し、出発。
牛深のお菓子をおやつに頂く。
坂でもイーバイクなら本当に楽。ギアの操作を細かくすれば、全く負荷がないように坂が登れる。
途中、牛深近くの工場エリアに立ち寄る。日曜日なので工場は休みだが、あたりには干された魚の香りがする。乾燥や燻されているので、生臭さはなく、出汁や鰹節のような和風の香ばしい香りがする。雑節の香りがする街、牛深。和出汁の香りですごく落ち着く。魚を干している場所には猫がよくいて、隠れた猫島だと思う。
2車線の道路が多い。道が少ないわりに、見どころが細かくあるので、レンタカーよりも自転車の方が見て回りやすい。複雑な地形の海岸線なので少し移動するだけで海と山の表情が変わるので写真を撮りたくなるシーンがたくさん。移動が楽しさに変わるのはイーバイクならでは。
今日は15キロ程度の軽いサイクリングで終わり。今日の宿「天草レストハウス結乃⾥」に到着。
テントサウナがある天草レストハウス結乃⾥に宿泊。ご飯がとても美味しい。
天草が大好きで2010年頃に移住したオーナーがもてなしてくれる。簡易な宿泊所だが、ホスピタリティは一級品。オーナーはダイビングガイドの経験もあり、海も山も詳しい。なにより天草が好きなことが伝わってくるのが気持ち良い。旅をもっと面白くしてくれる宿だ。
宿はオーシャンビュー。夜は満天の星空。
部屋は和室。トイレ、シャワー共同。暖房クーラーあり。タオル、歯ブラシなども貸出・販売あり。
電子レンジ、ポッド、冷蔵庫あり。Wi-Fi無料。
海辺のテントサウナで整う
夕食前にサンセットサウナに入る。サウナハットやサウナポンチョの貸出あり。
私はサウナ好きなので、まさかこんなところでテントサウナに入れるとは!嬉しい。
薪ストーブで自由に温度調整が可能。月桃のロウリュも用意してくれる。
写真を見ただけでも気持ちよさが伝わると思う。あまりに気持ちよかったので、夕飯後に再度入った。夜は満天の星空の下、サウナと海辺を独り占めできる貸し切りナイトテントサウナ。なんて贅沢なんだ。
小さい浴槽で水風呂も用意してくれる。滑りやすい浜辺なので気をつけていれば、海にそのまま入ってもOK。
夕食は地元⾷材を⽤いたバーベキュー
外のテラスでバーベキューをする予定だったが、風が強く寒いので室内で。暖炉のある素敵な空間。
夕食は天草で育った宝牧豚(ほうぼくとん)と鶏の天草大王のバーベキュー。徹底的に水にこだわって育てられた宝牧豚の肉は美しい色で、脂身でもサラサラしていて美味しい。タレは要らない。塩をかけるだけで、すごく美味しい。
天草宝牧豚の特徴 | 【あまくさ宝牧豚】公式サイト磯辺養豚場
ポークリブも美味しかった。
私は鶏肉が一番好きなので、楽しみにしていた天草大王。天草大王は一度絶命した銘柄で、復元を遂げた幻の地鶏と呼ばれる。日本最大級の大きな鶏で、美味しさや肉質の良さから人気だったが昭和初期に絶滅。しかし、その後も需要が高く、熊本県農業研究センターが過去の文献などを参考に交配を10年間続けた結果、ついに絶滅した天草大王を復元できた。そんな歴史も面白い天草大王のバーベキュー。予想を超える美味しさだった。これを書いている今でも思い出すと涎が出る。
天草大王について | 熊本地鶏「天草大王」の生産・販売|あそ大王ファーム株式会社
肉だけでなく、野菜も地元産。漁港の街なので魚が美味しいのはもちろんだが、野菜も肉も美味しい。
雑節と根菜のスープは衝撃的に美味しかった。シンプルな味で染み渡る和出汁のうまみ。昼に食べた雑節出汁の海鮮丼も雑節と根菜のスープも、天草のうまみの真髄かもしれない。旅先で出会う新しい物は醍醐味の1つだが、ここ最近の旅で一番衝撃的に美味しかったのは、この雑節のうまみかもしれない。なにげない出汁だが、天草では注目して食べて欲しい。
2日目は晴れ!絶好のサイクリング日和
快晴!
夏にはイワシの群れも集まり、綺麗なブルーのグラーデーションが海を彩るらしい。
秘密基地みたいなリビングスペースからも眺めが良い。
今日のサイクリングを考えた行動食メニューの朝食はパンや野菜などがメイン。
コーヒーも淹れてくれる。
健康的な食事で寝ぼけでいた意識もシャキッとする。夕食も朝食も、天草ならではのメニューで、ご飯が美味しい宿だった。
富岡港を目指し、イーバイクで約45キロの行程。
地図でルートを確認。天草の西海岸を北上する、海の景色が綺麗なサイクリングコースだ。
世界遺産 崎津集落・世界遺産センター・教会⾒学
まずは天草の一大観光地、崎津集落へ。世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録されたエリアだ。歴史の授業で習ったことがある天草一揆、島原の乱、隠れキリシタンなどのこと、世界遺産になった理由でもある独特の信仰文化を学ぶことができる。
ここに行って初めて知ったが、潜伏キリシタンと隠れキリシタンは異なる意味を持つ単語。潜伏キリシタンは禁教期に表向きには仏教徒の振る舞いをしつつ、潜伏しながらキリスト教を信仰していた人たち。かくれキリシタンとは、禁教期が終わり、明治時代に入って普通のキリスト教が認められた後でも、潜伏時代からの信仰方法を続けた人たち。
教会だけが注目されがちだが、世界遺産になっているのは教会だけでなく、崎津集落の教会周辺地域も評価されたのが理由だ。古い町並みの散策を楽しんで欲しい。
対岸から眺める教会も美しい。日本の漁村に建つ教会、他ではなかなか見れない光景。漁師の作業場である、海にせり出したカケも面白い景観の1つ。
教会の内部は見学可能。
カエルの置物とマリア様の像と錦鯉と松。すごい組み合わせだが、これが共生していたのが文化的に素晴らしいことだ。
崎津資料館には当時使われていた信心具やどうやって隠していたか、など実物品が展示されている。天草で独自に発展したキリスト教を間近に見ることができる貴重な資料館だ。柱に隠されたロザリオの実物展示が衝撃的だった。
漁村ならではの、岬に設置されたマリア像。
秋~冬が夕暮れのハイシーズンだ。
入り組んだ地形に沿って⼤江天主堂へ向かう
イーバイクに戻り、サイクリングツアー再開。入り組んだ地形をしているのでカーブを曲がるごとに景色が変わり、とても楽しい。直線だと疲れるが、イーバイクの軽さもあり、変わる景色に見とれていると、あっという間に移動している。
大江天主堂は高台にあり、眺めが綺麗。
絵に書いたような日本のきれいな村に教会が建っているのは独特で、見応えがある。教会内部にあった、袴姿のキリスト教の像が印象的だった。
西平椿公園にはラピュタのような神秘的なスポットがある。
大江天主堂の西側にある、西平椿公園は斜面に広がる椿が綺麗な展望公園。
ドライブの休憩地点で立ち寄る人が多い。
斜面で階段が多いので杖が用意されている。
ここでは巨岩を根で包むアコウの木が名物。
写真では伝わりにくいほど、大きくて迫力がある。こういうプチ観光地みたいな物はスキップすることもあるが、ここはおすすめ。思ったよりも迫力があるし、立入禁止でもないので近寄ることができるのが他にはない面白さだ。
根がほぼ直角に曲がっている。すごい。
天草西海岸の絶景を求めて、海岸線をライド
少し坂を登り、山に入る。緑に囲まれたトンネルは森林浴のようで気持ちが良い。
海の青と山の緑が目まぐるしく変わる。景色に飽きることはない楽しいサイクリングコースだ。
途中、道路が陥没していて自動車通行止めのルートもある。ここは自転車だけの特権。ここを抜けた先から見える絶景は個人的に西海岸ルートで最も綺麗な景色だった。車では行けない、とっておきの場所。
しばらく進み、白鶴浜海水浴場が見えてくる。白い砂浜が綺麗で、海のグラデーションが鮮やか。
昼食は下田温泉。無料の足湯もある。
天草西海岸の中間あたりに位置する、下田温泉に到着。
下田温泉センター 白鷺館内のレストランで食事。
ロザリオポークと呼ばれる銘柄のトンカツ定食を注文。
昨夜の宝牧豚もロザリオポークも美味しい。肉も魚も野菜も全部美味しいし、それをさらに美味しくする出汁も最高級の天草の食事、ポテンシャルが高い!
売店や足湯があるので、休憩にもぴったり。
夕陽がきれいな場所なので、下田温泉にもう1泊して、サンセットライドなんかも気持ちよさそう。
天草西海岸サイクリングコースのハイライト
下田温泉を出発し、最終目的地の富岡城・富岡城ビジターセンター⾒学へ向かう。天草にはいくつかのサイクリングコースが設定されており、この西海岸のルートは天草サンセットラインやドルフィンラインと呼ばれている。一部、劇場版「弱虫ペダル」で登場したサイクリストの聖地でもある。
天草西海岸のハイライトでもある、波打ち際の海岸線を走るコース。
平坦で走りやすく、景色が綺麗。天気も良かったので本当に気持ちの良いライドだった!
交通量は少しあるが、どの車も親切に運転してくれる。
海岸沿いの岩の形や波と浜辺の関係性が変わっていくのを眺めて走る。
テトラポットのグラデーションがCGかと思うくらい綺麗だったので思わず止まって写真を撮った。
富岡城・富岡城ビジターセンター⾒学へ
富岡城に向かう坂がラストスパート!というわけでもなく、イーバイクなので最後まで楽ちん。坂でもスイスイ進む。
天草一揆の舞台にもなった場所。こういった郊外の歴史関連の場所はイマイチなことが多いが、富岡城は再現度の高い復元がされており、雰囲気は抜群。
石組みも手抜きなしで、ものすごい高品質な城壁。
当時、攻めにくい場所にあっただけあって、眺めはとても美しい。海の色がとても綺麗。
ビジターセンターには天草の海や魚についての展示がある。
キリシタン関連や歴史についてのパネルもあるので、天草について広く学ぶことができる。こういった施設に行くか行かないかで旅の深さも変わってくる。
富岡港から船で長崎へ
サイクリングの目的地、富岡港に到着!今日だけで約45キロ、イーバイクで移動したが、本当にそんな距離を走ったのだろうか、というほど楽だった。止まりたい時にすぐ止まれて、何か見つけたらすぐ寄れる、海や風を全身で感じられる自転車での移動は「移動」ではなく「アクティビティ」として観光のハイライトだった。
船は片道2,030円。所要時間約30分。支払いは現金かPayPay。
簡単な売店がターミナルにはある。
長崎・天草ラインはフェリーではないので、車は乗れない。
クルーザーのようなタイプの船。自由席。
長崎の茂木港に到着。バスで長崎市内はすぐ。
茂木港と長崎駅は近く、バスで30分程度。この移動の効率の良さが天草の魅力の1つでもある。
バスは多くはないが、船と連動しているので乗り継ぎは悪くない。2023年2月現在、一部コロナ禍で時刻表が変更になっているが、不便はなかった。近くにローソンがあり、軽食もとれる。
意外と近い天草。長崎や鹿児島旅行に付け加えるのがオススメ。
バスと船を乗り継げば、長崎からも鹿児島からも意外と近い天草。今回初訪問だったが、もっと遠いと勘違いしていた。
軍艦島や温泉など、観光地が多い長崎と熊本。これらの間に位置する天草では手軽に大自然が楽しめる。1泊2日でも良いし、レンタカーなら日帰りも可能。都市部とは違ったウェルネスが体験できる、身近な天草を付け加えると旅に深みが増すだろう。もちろん、天草をメインにすれば文化や自然をもっと楽しむことができる。
天草は広く、今回行けなかったエリアやサイクリングコースもあるし、ハイキングも可能。食事は抜群に美味しいので、幅広い楽しみ方ができる天草。次は海を楽しめる夏に行ってみたい。