AIをはじめとするテクノロジーの進化や終身雇用制の実質的な終焉を迎え、個々人の働き方に対する価値観が大きく変わってきている現代において「起業」を選択する若者が増えているという記事をよく目にする。
起業することで自身の「好きなこと」や「得意なこと」を事業として売り出すことができ、働き方の自由度も増すが、実際に売り上げを作り、事業として継続するとなると、そこには大きな壁が立ちはだかる。
業界での認知度向上や既存サービスとの差別化、経営にかけることができるリソースの乏しさなど、解決しなければならない課題が山積みになってくる。特に顧客にどのようにサービスを届けるかというマーケティングの知識も必須になるが、そういったことを体系的に学べる場は少ない。

日本を支えてくれている多くの中小企業でも、同じような課題を抱えている経営者も多いと知人から聞いたことがある。自社の特性や強みをどのように顧客に伝え、数ある選択肢の中から選ばれる存在になるか…。今回は、そんな悩みを解決するヒントを与えてくれる、興味深い書籍を見つけたので紹介したい。
視点を変えることで「当たり前」が「最高の武器」に変わる!
“なかなか売り上げが伸びない”“顧客が定着しない”自社のサービスについて、このような悩みを抱えている人にこそ読んでほしい一冊。それが「小さな会社がルールを変える ポジショニングの教科書 – 「個性」で市場を動かす思考法」だ。
中小企業の「個性」が地域経済の主役に。新刊『小さな会社がルールを変える ポジショニングの教科書 』11月25日発売 | davide marketing 株式会社のプレスリリース

本書の題名にある「ポジショニング」とはマーケティングの基本的な考え方であり、本書の言葉を借りると“選定した顧客グループの心の中に、自社の商品やサービス(提供価値)を独自に位置付けること”と表現されている。
最初はサッカー用語の「ポジショニング」とかのイメージが強くて違和感があったが、本を読んでみてその意味がわかり、すごく納得した。マーケティングにおけるポジショニングとは「企業やブランドが市場においてどのような立ち位置を目指すか決めること」と言い換えることもでき、市場を細分化して(セグメンテーション)、そこからどの市場を対象とするか(ターゲティング)など、その他の分析と併せて考えられるのが一般的だ。目の前のことばかりで、こういう広い視点で考えたこともなかった!
本書ではポジショニングの思考法を用いて、企業としては一見「当たり前」だと思っている「個性」を、競合には真似できない「最高の武器」に変えていく具体的な方法を紹介してくれている。
初心者でも分かりやすい、新しいマーケティングの指南書!
「こんなに分かりやすいマーケティング関連書籍には出会ったことがない」というのが本書を読んでみて私が抱いた率直な感想だ。
SWOT分析やストーリーテリング、カスタマージャーニーといった様々な手法が登場するが、本書が一続きの「物語」の形で綴られていることもあり、それぞれの手法をまず直感的に捉えることができる。

よくあるのがこういう分析とかが大規模すぎたり、非現実的な参考事例ばかりで、自分事にしにくいのでなんとなく苦手な印象だった。しかしこの本では要所要所に「実務」が散りばめられているので、各フレームワークの分析方法から結果の活用方法までを簡潔に学べ、マーケティングについて学んだことのない人でも抵抗なく受け入れられる構成になっていると感じた。もちろん、これまでにマーケティングをかじったことがある人でもひとつひとつの方法について再学習できる内容になっていると思う。

事例として挙げられている事業についてもカフェや美容室・製造業メーカー・学習塾など、多様な事例で自分ごととして捉えることができるジャンルの業種が多いため、書籍としての読み易さを際立たせてくれる。身近にあるわかりやすい業態が多くて、すごくイメージがしやすかった。
本書の著者である麻生陽平氏は様々な企業のプロモーションやマーケティング・組織マネジメントに携わった経験を活かし、2020年にダヴィデ・マーケティング株式会社を設立。中小企業を中心にマーケティング伴走支援等のサービスを展開している。
これまで得られた知識や経験、成果をベースとして中小企業に焦点を当てた実践的な知見が事例ごとにまとめられているため、中小企業の困りごとを的確に突いた章立てとなっており、興味のある章や自社の課題解決に適した章から読み進めていけるのも嬉しいポイントだ。
マーケティングって意外とシンプル!?ポジティブな気持ちにさせてくれる一冊!
これまでは、マーケティングと聞くとどこか難しいという印象があったが、本書を読み進めながら段階的に理解すると、意外とシンプルで面白いという感情が湧いてきた。
「売り手も買い手も人なのだから、人の心に訴えかけるやり方を考えなければ成功しない」
本書の中に出てきたこの言葉にも、ハッとさせられた。数字やファクトも大事だが、やはり最後は人の心なのだということを改めて伝えてくれているようだ。

物語に出てくる登場人物が皆ポジティブなので、読んでいる途中からこちらまで熱い気持ちになり、学んだことをすぐにでも実践したい気持ちにさせられる。
自社のサービスを多くの人に届けたいという強い想いを持つ人には、ぜひ手に取ってほしい一冊だ。