
「夢の劇場(Theatre of Dreams)」と呼ばれるオールド・トラッフォード。マンチェスター・ユナイテッドの本拠地であり、世界中からサポーターが訪れるこの場所を、私は実際にスタジアムツアーで歩いてきた。ツアーはガイドによる説明とともに、普段は決して立ち入ることのできない舞台裏を見学できる内容で、ユナイテッドの歴史と現在を肌で感じられる時間だった。全て英語で理解しきれなかったので、動画を撮影して日本に帰ってきて全て翻訳した。実際のツアーの動画はこちら。
オールド・トラッフォード完全ガイド付きスタジアムツアー 日本語字幕付き - YouTube
ツアー開始と基本ルール

集合場所でガイドから注意事項が伝えられる。スタジアム内は全面禁煙、電子タバコやベイプも禁止。携帯電話は使用できるが、通話は禁止で、写真や動画撮影は歓迎だ。英語で理解できなかったが、ジョーク混じりの注意が入る。場が和んだところで、いよいよスタジアムの内部へと進んでいく。
マンチェスター・ユナイテッドの成り立ち

最初に語られたのはクラブの歴史だった。1878年に創設された当初は「ニュートン・ヒース・ランカシャー・アンド・ヨークシャー鉄道・クリケット・フットボールクラブ」という長い名前で活動していた。クリケットチームも同じ組織に属しており、現在もニュートン・ヒースの名で活動しているという。
しかし1902年、経営難により破産寸前となったクラブを救ったのが、地元の醸造家ジョン・ヘンリー・デイヴィスだった。彼は多額の資金を投じて会長となり、クラブ名を「マンチェスター・ユナイテッド」に改称。チームカラーを赤・白・黒に統一し、さらにトラフォードの地を購入してスタジアムを建設した。こうして現在へと続くクラブの礎が築かれたのだ。
観客席とホスピタリティ

オールド・トラッフォードは常に満員となる。シーズンチケット制のため、1試合ごとにチケットを取るのは難しいが、クラブ公式の仕組みを通じて一部が販売される。ガイドによれば、ホスピタリティ席は1試合250ポンド(約48,000円)ほどで、食事や飲み物付き。年間契約のボックス席は数千万単位の費用がかかるという。東スタンドの6人用ボックスで79,000ポンド(約1,540万円)、16人用の大型ボックスは270,000ポンド(約5,270万円)にもなる。驚くべき価格だが、数年待ちのリストが存在するほどの人気だ。
スタンドの名前と歴史

スタジアムのスタンドにはクラブの歴史を象徴する人物の名前が刻まれている。サー・アレックス・ファーガソン・スタンド、ボビー・チャールトン・スタンド。それぞれクラブの功績者を称えたものだ。特にファーガソンの肖像は、スタジアム外の銅像やコンコースに赤い綿糸をピンで張り巡らせた独特のアートで表現されており、26年半に及ぶ指揮の栄光が讃えられている。
ユナイテッドの社会的取り組み
ツアーではクラブが進めてきた障害者支援の取り組みについても説明された。車椅子専用席や視覚障害者向けの解説ヘッドフォンの提供、また「MUDSA」と呼ばれる障害者サポーター組織があり、2008年のモスクワでのチャンピオンズリーグ決勝には150人の障害者を完全無料で招待したという。単なるサッカークラブではなく、社会的責任を果たす存在でもあることが伝わってきた。
選手の更衣室と舞台裏

最も印象的だったのは更衣室の見学だ。ここは実際にファーストチームや女子チーム、ユースが使用する本物のロッカールーム。各選手の席にはユニフォームが掛けられており、試合前の緊張感を想像させる。ベッカムとファーガソンの関係性で有名な「ブーツ事件」が起きた場所もここである。

さらにマッサージ台や氷水プールが並び、ハーフタイムや試合後の選手ケアの様子まで知ることができた。
トンネルとピッチサイド

選手入場口となるトンネルを歩く瞬間は鳥肌ものだった。

子どもたちも参加した入場セレモニーのデモンストレーションも行われ、試合当日の臨場感を疑似体験できる。私は運良くアウェイチームのキャプテンをやることができて、一番前を歩くことができた。これは特に感動したな~。

ピッチサイドでは監督席に座り、フィールドを間近に見ることができる。天然芝はライグラスをベースに人工繊維が混ぜ込まれた最新のハイブリッド仕様で、ピッチ維持の裏側に科学技術が導入されていることも知った。
歴史の影:ミュンヘンの悲劇とバスビーベイブス

ツアーでは明るい面だけでなく、クラブの悲劇についても触れられる。1958年、ミュンヘンでの飛行機事故で22人が命を落とし、その中には8人の若き選手が含まれていた。ダンカン・エドワーズの名は特に語り継がれている。スタジアム内外には犠牲者を追悼する碑や展示があり、歴史の重みを感じさせる。
プレスルームと最後のメガストア

記者会見場では、試合後に監督が質疑に答える様子を体験できる。実際に席に座り、報道陣になった気分で質問を投げかけられるのも面白い演出だ。ここでの写真撮影は追加料金が必要。その後は公式メガストアへ移動し、ツアーは終了となる。ここではユナイテッドの最新グッズやユニフォームを購入でき、ツアーの余韻を持ち帰ることができる。ちなみにグッズは全部日本より高い。限定品でもなければ日本で買う方が圧倒的に安い。

ツアー後はマンチェスターユナイテッド博物館を見学することができる。こちらは昔の選手やユニフォームなどのアイテムがメイン。ユニフォーム好きの私は楽しむことができたが、選手が古すぎてわからないことも多かった。
まとめ
オールド・トラッフォードのスタジアムツアーは、単なる施設見学ではない。クラブの誕生から栄光と悲劇、そして社会的取り組みまでを網羅した「生きた歴史体験」だ。普段はテレビの中でしか見られない舞台裏に立ち入ることで、ユナイテッドが世界中の人々に愛され続ける理由を実感できた。もしマンチェスターを訪れる機会があれば、このツアーは絶対に外せない体験である。