日比谷公園にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨について考える

日比谷公園に落ちている石のお金に価値はあるのか?

日比谷公園にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨について考える

ミクロネシア連邦ヤップ州で実際に使われていた、石のお金(石貨)。石貨はヤップ島にはない石灰岩で出来ている。500km離れたパラオで切り出した石灰岩を「いかだ」でヤップまで運んでいた。日本のいくつかの場所で見ることができる。石貨はお金だと解説されていることも多いが、元々はいわゆる通貨よりも貴重なもので、ヤップの人たちがとても大事にしていた物。この記事では、ヤップ現地に行って、私が考えたことや、現地での価値や使われ方について考えてみた。

ミクロネシア連邦ヤップってどこ?

ミクロネシア連邦はグアムの南、西太平洋に広がる島国。第一次世界大戦から第二次世界大戦まで日本領土だったエリアの1つ。1986年にアメリカ信託統治から独立し、ミクロネシア連邦という国家になった。国を構成する4つの州の1つがヤップ州。ヤップ州最大の州都があるのがヤップ島。私が隣のチューク州に住んでいた時にヤップに旅行で行った。

日比谷公園にあるヤップの石貨

無造作に置いてあるだけなので、知らない人がけっこう多い。実際に見に行ってみた。久しぶりに行ったら、草が伐採されていて、すっきりしていた。日比谷公園の道端に置かれたヤップの石貨。場所はこのあたり。

グーグルマップにも載っているので、見つけるのは簡単。日比谷公園内のマップなどには載っていない。

ヤップの石のお金「石貨」の現在の値段

日比谷公園にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨について考える

石貨はヤップ語では「ライ(Rai)」という。石貨は鍾乳石・結晶質石灰岩で出来ている。案内板によると、大正13年(1924年)に1000円くらいで使えたそうだ。現在の価値にすると150万円くらいらしい。といっても、ヤップの石貨は現在の紙幣のように日常的にそれで買い物をしたり、という使い方ではなかったので同じように捉えるのは間違っていると思う。

ヤップ在住が長いスーさんの記事を参考にさせて頂いた。現地在住が長く、現地語や文化を理解されているスーさんの意見が一番真実に近いのではないか、と私は思う。スーさんにはヤップに遊びに行ったときに大変お世話になった。

1924年にヤップ島支庁長から寄贈された、と書いてあるが大事なことが抜けている。この時代はヤップ周辺は日本の統治下であり、日本が日本に寄贈したものであること、歴史の事実が抜けている。日本管轄の南洋庁の支所から日本政府に送られたものだということが伝わらないと、これはヤップの現地の人たちから送られたものだと勘違いしてしまう。

日比谷公園にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨について考える

私が以前住んでいたミクロネシア連邦チューク州にはこういった文化はなかったが、ヤップもチュークも日本やアメリカによって紙幣経済、資本主義が持ち込まれた。それに伴い、お金(Money)という表現で表されるこの石貨だが、当時は人と人の結びつきを表すものであったそうなので、お金と呼ぶべきなのか疑問だという意見に自分も賛成。

ヤップ現地での石貨の価値は?

現在でもヤップに行けば石貨は普通に見ることができる。一部では現在も使用されているということも聞いたことがあるが、真偽は定かではない。ヤップにも中国資本などが流れ込んでおり、貨幣社会になってきている部分も多い。ただ、過去も現在もこの石貨は「モノを買うための紙幣」という使われ方はしていない。それははっきりしていることだ。

石貨は現代の通貨としての価値は持たず、持ち主や一族の資産として、冠婚葬祭などの儀式で使う贈答品として価値を持つ。石貨を贈り合うことで、両者の結び付きを強くする精神的な価値があると言えるかもしれない。

例えば結婚した時にお互いの家族の結びつきを強くするために石貨を贈り合う、村同士で争いをして和解のために石貨を贈り合う、酔って相手の家を破壊してしまったお詫びに石貨を贈る、など。双方向で贈り合うこともあれば、感謝やお詫びの印として一方的に贈ることもあるようだ。贈り物ではあるが、石貨本体は受け渡しせず、動かさないで所有権だけが移るシステム。

日比谷公園にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨について考える

なので、ヤップに行くとヤップ人の家の前には石貨が置いてあることが多いが、聞いてみると以前に所有権が移っていて、その家の人の物ではないとか所有者が今ではわからないということもあるらしい。かといって資本主義の土地のように、貨幣などで石貨の所有権を買うことはできない。

石貨の価値はパラオで切り出した石灰岩をヤップに船(当時は原始的ないかだ)で持って帰ってきた時の苦労度で決まるとされる。大きさや厚み、色は関係ないらしい。ただし、割れた石貨は価値がなくなる。

航海時に嵐を乗り越えたとか、長期間の航海でヤップに運んだ、とかそういうストーリーが石貨の価値になる。その価値やストーリーは石貨の持ち主や家族、一族や村の口承で後世に伝わっていく。しかし、ヤップ最大(約3m)の石貨がわかりやすいので観光地になっている。

参考 石貨 (ヤップ島) - Wikipedia

参考 ヤップ流伝統文化の継承−人々の心をつなぐ石貨− | 世界HOTアングル - JICA

日比谷公園の石貨の置き方は間違っているらしい

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この石貨は置き方が間違っているらしい。それが本当だとしたらヤップ現地に対する敬意が欠如している。日本が日本に送って展示した、というのがちょっと滑稽に思える。しかし、80年以上前の物が現在でも手に触れられるように展示されていることは歴史の重みを感じる貴重な物だ。けっこう欠けているように見えるが、さらに壊されたりすることのないよう、ずっとこのまま展示されていて欲しい。

夜の日比谷公園ではヤップの石貨をライトアップしてみよう!

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飲み会の後や気持ちの良い夜の散歩などに最適な日比谷公園。石貨周辺は街頭があるだけで暗いが、スマートフォンなどのライトで裏側から石貨を照らしてみてほしい。iPhoneのライトで半透明の鍾乳石・石灰岩の純度が高い部分を裏から照らすと、とても綺麗に光が透過する。

日比谷公園にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨について考える

日中は白っぽく見えていた石貨に光を通すと赤みがかかり、暖かい印象を受ける。鉱石の不思議だ。是非、有志で集まって裏からたくさんのライトで照らしてみたい。

現在のヤップ現地で見れる石貨

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ヤップを訪れたのは2019年6月。石貨やヤップの踊り、文化から想像する以上に発展していた。電気、インターネット、道の舗装、お店の品揃えなどは意外と十分だった。マンタレイリゾートというミクロネシア連邦最高級のホテルもある。泊まってみた記事は下記。

ヤップのマンタレイベイリゾートに宿泊してみた - Travel Kurarin

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石貨は1931年まで製造されていたそうで、現在でもヤップ現地ではたくさん置いてある。石貨は至るところにあって、珍しいものではない。

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横から見た写真。

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お店や建物の軒先に飾ってあることも多い。

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レストランにも無造作に置かれている。

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マンタレイベイリゾートのアメニティは石貨の形をした石鹸だった。ストーンマネー、と書いてある。

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ヤップのマングローブに残る「タガレン水道」と日本語で刻まれた石貨。看板、道路標識として石貨が使われている。

Drone view & Diving with Manta / Yap, Micronesia/Colonia town aerial view - YouTube

ヤップの街の様子などはこちらの動画を是非。

パラオで見られるヤップ島石貨関連の情報

元々、ヤップ島の石貨で有名なのでヤップで造られたという印象が強いが原産はパラオ。

日比谷公園にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨について考える

この岸壁はパラオにあるヤップの石貨の原料となる石灰岩が切り取られていた場所。それを加工してヤップに船で持って帰ったらしい。パラオのダイビングやマリンアクティビティに参加すると船で立ち寄ることが多い観光地の1つ。

日比谷公園にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨について考える

パラオの市街地はずれにあるエピソンミュージアム。ここにもヤップの石貨が展示されている。他にも貴重な資料が多く展示されているので、パラオに行ったら必ず訪れて欲しい。

日比谷公園にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨について考える

英語では「ヤップだけが円盤状の貨幣文化を持っていたわけではない。パプアニューギニアやソロモンでは貝のお金が使われていた」と書いてある。貝はキラキラしているし、イメージしやすい。石のお金を使っていた文化は他にもあるのかもしれない。

日本全国にあるヤップの石貨を見に行こう

このヤップの石貨、日比谷公園以外にも日本で見れる場所がある。大阪や沖縄などにある、石のお金を見に行ってみた!詳しくはこちら。

日本全国にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨を見に行ってみた! - Travel Kurarin

デイリーポータルZで記事をご紹介頂きました!

日比谷公園にある、ミクロネシア連邦ヤップ島の石貨について考える

画像引用 https://dailyportalz.jp/kiji/2022-07-29-JiyuPortalZ

ヤップの石貨をひたすら集めた記事として応募してみたところ、記事投稿企画で紹介頂きました。

ヤップの石貨・パンドラの箱・イカの姿フライ~自由ポータルZ :: デイリーポータルZ