旅人を家に無料で泊める「カウチサーフィン」を4年間やってみた
社会人になってから友達とルームシェアをはじめた。男2人で2DKの家を借りた。雑居ビルの最上階、屋上付きのすごく良い家だった。両国から徒歩10分、浅草にも近くて都心にも近い。そんな自分の家でカウチサーフィンのホストを始めた。
青年海外協力隊に参加するまでの4年間、それを続けた。色んな旅人に会って、楽しいこともめんどくさいこともあった。仲良くなった旅人と今度は彼女たちの地元で遊んだこともあった。イランに旅行に行ったときにはカウチサーフィンで探した人の家に泊まった。そんな4年間のカウチサーフィンの記録。
【追伸】コロナ後にカウチサーフィンは有料サービスになってしまったが、現在は旅行需要の戻りとともにサービスが再会している。
- 旅人を家に無料で泊める「カウチサーフィン」を4年間やってみた
- カウチサーフィンで外国人旅行者を泊めていた俺の家
- バックパッカーたちとの実際のやり取り
- 面倒くさかったこと、カウチサーフィンのデメリット
- 楽しかったこと、カウチサーフィンのメリット
- インバウンド旅行客、旅人との思い出
- ゲストとしてカウチサーフィンでイランで泊まってみた
- さいごに
カウチサーフィンってなに?
簡単に言うと、旅人を泊めたい人(ホスト)とソファでもいいからタダで寝かせてほしいという旅人(ゲスト)を繋げるプラットフォーム。主に欧米で人気が出て、最近のインバウンドムーブに乗って日本でもホストや利用者が増えた。お金のやり取りが発生するairbnbとは異なり、「友達が遊びに来たから家に泊めた」という軽いノリなので、法的に問題になることもなく、逆に大きな話題になることもないサービスだ。俺が始めたのは、英語の練習がしたかったこともあるが一番の理由は楽しそうだったから。
Meet and Stay with Locals All Over the World | Couchsurfing
カウチサーフィンのシステム
ホストは自分の家の情報や写真、自分のプロフィール、家のルールなどを記載できる。ゲストは旅行の日程や自分のプロフィールなどを記載できる。
基本の流れはこうだ。
- ゲストが行き先と日程でホストを探して、連絡をとる。
- 連絡を受けたホストが受け入れ可否を決める。
- 受け入れOKなら待ち合わせなどをメッセンジャーで決める。
- 泊まる。
逆に、旅程を公開しているゲストにホスト側から「うちに泊まってよ!」とリクエストをすることもできる。
https://www.couchsurfing.com/people/motokikurabayashi
これが俺のプロフィール。4年前のあまりに幼稚な英語で書いたままなので今見ると恥ずかしくてひどい。笑
無料会員と有料会員があり、緑のマークで有料会員はひと目でわかる。有料会員だとゲストが安心してリクエストできる、自分がゲストの場合はホストが安心して受け入れてくれる、というメリットがある。確か年会費が2500円くらい。最初の1年くらいは無料会員だったが、楽しくなってきて途中から有料会員になった。有料会員になるとリクエストの数はかなり増えて、効果があった。
カウチサーフィンのプロフィール
俺がプロフィールで気をつけていたのは下記の点だ。
・なるべく顔が写っている写真をたくさん載せる。
・自分のプロフィールを充実させる。好きな音楽や映画、過去行った旅行先など。
やっぱり、同じ家で寝るわけだから顔がわかって、なんとなく人柄がわかるほうがいい。
・色んな海外旅行先の写真を載せる。
リクエストの中に「この写真はどこ?」「俺も同じところに行ったよ!」という一言があると嬉しいし、ちゃんとプロフィールを見てくれたわけだし、ホストとして受け入れようかな、と思える。
・家の写真をたくさん載せる。
自慢の家、というのもあるが家の写真をたくさん載せた。自分がゲストだったら泊まる場所の写真は多い方が安心する。屋上の写真や装飾がされた家の写真を見て「すごく泊まりたくなった!」とリクエストをくれる人もいた。
・家のルールや設備を明確に載せる。
やはり価値観の違いは必ずあり、思いがけないことが起きて面倒くさいこともあった。自分が迷惑を被らないようにも、ゲストが快適に過ごすためにも細かいルールでも書いておいたほうがいい。俺らが深夜帰宅になることもあること、あまり頻繁に外出や観光に付き合えないこと、食事は各自で勝手にやってほしいこと、布団が一枚しかないこと、Wi-Fiがあること、洗濯機や冷蔵庫は自由に使えること、など。あと、うちにはルームメイトがいたので、彼の迷惑にならないようにも気を使った。
・自分の家がどこにあるのか、近くになにがあるのかを載せる。
はじめて行く場所は土地勘がないもの。有名な観光地が近いことや、どこの街が近いのかを書いてあげるだけでも助かる。そして、これは集客力にもなる。家の近くにはスーパーがあることや桜が綺麗な川があることなども載せていた。
カウチサーフィンで外国人旅行者を泊めていた俺の家
ただ載せたいだけ(笑)
でも面白い家だったから、泊まってみたいってリクエストも多かった。
屋上は本当によかった。
ゲストに大好評だった、うちのお手洗い。
玄関前、階段の踊り場。
玄関。
リビング。自分たちで作ったカウンターテーブル。ここでご飯を食べる。
俺の部屋。
バックパッカーたちとの実際のやり取り
何度かゲストを受け入れて、評価が高くなってくると訪日人口の増加と共にリクエストはどんどん増えた。ただ、訪日人数ではトップクラスである東アジアの人たちからのリクエストはほぼなく、ほぼ全てが欧米からだった。旅行スタイルや現地での旅行商品、カウチサーフィンの知名度の違いだろう。多い時では一日に数件のリクエストがくることもあり、返信するのが大変だった。
俺の場合はリクエストを見て、下記をチェックしていた。
・コピーしただけのリクエストじゃないか(宛名が違うとかは論外)
・なにか俺のプロフィールについてコメントがされていないか(きちんと見てくれているか)
・ゲストのプロフィール、評価
これらを見た上で返事をしていた。泊めたくないな、と思えば「受け入れ不可」ボタンを押して終わり。「受け入れ可」ならその後に何通かメッセージのやり取りをする。
俺の電話番号や連絡先、住所を送って、待ち合わせは近所のセブンイレブンにしていた。なにかあってもWi-Fiがあるから連絡がとれる。待ち合わせ場所に遅れてきた旅人もいたが、会えなかったことはなかった。
宿泊が終わると、ゲストがレビューを書いてくれる。必須ではないので全員書いてくれるわけじゃないが、書いてもらえると嬉しい。
実際にカウチサーフィンで外国人を泊めてみた
初めて泊めたのは香港からのカップルだった。確か2泊だったかな。初めてでよくわからない上に、やっぱり英語でのコミュニケーションがうまくできないのがつらかった。その後は一人旅、世界一周の人、ワーキングホリデーで日本に来た人、ワーキングホリデーを終えて帰る人、仕事を探して旅行している人、世界一周から帰ってきたばかりの日本人など、色んな人を泊めた。日本人からのリクエストもあったが、音信不通になることが多かった。
色々なことがあったけど、なにかを盗まれたり壊されたりしたことはなかった。俺の家は出入り自由にしていて、鍵は家の玄関前に隠すルールにしていたので悪巧みすればなんでもできただろうが、なにもなかった。一応、人を選んで受け入れていたからかもしれない。
面倒くさかったこと、カウチサーフィンのデメリット
全員に共通することではないが、4年間カウチサーフィンのホストとして旅人を受け入れた中で面倒くさかったこと。
・水回りが汚くなる
洗面台や流しがびしょびしょだったり、泡だらけのままだったり、掃除する手間が増えたことはあった。
・寝れない
ゲストは俺の部屋で寝ることになっていたので、会話などで寝れないこともあった。
・iPhoneの充電ケーブルが持っていかれた
貸していたらそのまま持っていかれた。
・冷蔵庫が汚くなる
「これ、このまま入れる!?」みたいなことがあって冷蔵庫内が汚くなったことがあった。
・普通の友達が家に呼べなくなる
当然ながら、家にゲストがいると友達が呼べない。気にしない人ならいいけど。
・たまに気まずい(笑)
お互いの英語がうまく会話できなかったり、そもそも相手の言っていることが理解できないと普通に気まずい(笑)
・ゴミが増える
大きな買い物をする人がいると、ゴミが増える。ダンボールとか大きな紙袋とか。捨てるのがめんどくさかった。
楽しかったこと、カウチサーフィンのメリット
面倒くさいことを先に書いたけど、やっぱり楽しかったことの方が多い!ホストやっててよかったな~と思うことも多くて興味があるならカウチサーフィンはおすすめ。
・外国人の友達ができた。
まぁ当たり前の理由だけど。想い出深いのは世界一周中の韓国人2人を受け入れた。彼女たちが韓国に帰国した後、俺が遊びに行ってソウルを案内してもらったのはとても楽しかった。
・海外の色々な話を聞けた。
「うちの国ではこうだよ」「日本がそうなら、そっちの方がいい」とかもうとにかくなんでも、近い年齢の外国人と話をするのが面白かった。旅先で出会うくらいでは話さないような、昔の話や家族の話、政治や教育、働くこと、将来の夢、不安とかどうでもいい話もたくさんした。
・英語が上達した。
カウチサーフィンと同時にやっていたスカイプ英会話。これの実践の場にもなったし、確実に英語は伸びた。
・新しい価値観に触れた。
「世界中のレストランを見てみたい。そして、妻とレストランをオープンしたい」「仕事なんてすぐ見つかるから海外で働いてみたかった」「ワーキングホリデーで日本に来てみたけど働いてみたらこうだったよ」「アメリカで働くのが疲れたからギターだけ持って、行けるところまで行ってみようと思う」などなど…。普通の旅行スタイルではないカウチサーフィンを使っているだけあって、不思議な人たちばかり。中にはブラジルの日系人の人もいて、日系人が感じる日本のことが聞けた。彼ら彼女らと話していると普通にサラリーマンやってる自分を考え直したり、あんな人達もいるんだし、と思って逆に余裕が出た。日本人でも価値観はそれぞれで、人と話していると気づくこともあるけど国籍を超えるとそれはもっと面白くなって、もっとたくさんの価値観に触れることができた。
・自分じゃ行かないところに行ける。
浅草の観光や、普段は行かないお店に行ける。ゲストが行ってみたいところに一緒に行ったりすると知らないところや、普段は行かないところに行く機会を作ってくれる。
・エッチなことや出会いはありませんでした(笑)
どこに書くか迷ったけど…(笑)カウチサーフィンを使って性的交流を持った、という記事を見たことがある。まぁそれも事実なんだろうけど、俺は幸か不幸か全くなかった。その気もなかったし。
女性1人や女性2人組のゲストを受け入れたことはあったけど、特に何もなし。強いて言うなら下着が部屋に干されていたり、寝る時半裸だったり、それくらい。
一方で、カウチサーフィン上ではレイプまがいのことをされるという事件も実際に起きている。 女性のホストやゲストは気をつけたほうがいいかも。やっぱり評価を見たり、女性を選ぶとかの対策はしてもいいかもね。
そして、カウチサーフィンの検索で上位にあがってくる出会いについて、正当な男女のお付き合いということであれば努力次第でなんとかなるかも?
前提として英語ができないとコミュニケーションできないが、それさえクリアすればあとは普通の人対人。別に好きになってもおかしいことじゃないと思う。実際、すごく仲良くなった人もいたし、努力とやる気次第かな。
インバウンド旅行客、旅人との思い出
思い返せばずいぶんたくさんのゲストを迎え入れた。中でも印象深かった人たちとの思い出。
・フランスからのカップル
ワーキングホリデーのために日本に来た2人。彼女には日本に来たのに大豆アレルギーがあるという(笑)スーパーやファミレスでアレルギー表示をあんなに見たのは最初で最後だった。サッカーが好きな彼とはたくさん話をした。彼らは沖縄の恩納村や長野の白馬で働いたあと、フランスに帰った。帰国前にもうちに泊まってくれて、1年間どうだったかを聞いたのがすごく印象深い。
・ドイツからのギター弾き
ドイツ人で人懐っこい彼は、中国で音楽の先生をしていたそうだ。でもしばらく働いたので旅に出てみたらしい。日本は路上ライブをしても全然お金が入らない、と悲しんでいた。俺もたまに路上ライブをするので意気投合し、ギターとカホンを持って秋葉原で2人で弾き語りをしたのをよく覚えている。
その時、やっぱりお金は集まらなかったけど、大学生が興味を持ってくれて、1000円くれた。その大学生もまたギター弾きだった。ビートルズを弾いたら酔っ払いが10円だけくれた。彼はうちに長く滞在したあと、千葉にヴァッパサナー瞑想をしに行っていた。日本に施設があるなんて知らなかった。そして彼はベジタリアンで、肉を食べなかった。その思想を聞いたのも面白かった。
・北欧からの夫婦
食事が大好きな彼らは世界一周して、世界中のご飯とレストランとお酒を回るのが目的だった。うちに居たときにも良いレストランなどをまわっていたみたいだ。奥さんがワインのスペシャリストで、お酒が好きだったので日本酒を飲みに行って盛り上がった。ラーメンを一緒に食べに行って、自力で替え玉を注文していたのは感動した。その時に飲んだウーロンハイがとにかく不味かったらしく、あれは笑った。
・フィンランドからのバックパッカー
英語が通じるはずのフィンランドから来た彼とは全く会話ができなかった。あまりに会話がなりたたない上に、相手もイライラしはじめて家の中にいるのがすごい気まずかった(笑)
・韓国からの世界一周二人組
女の子2人で世界一周中。今まで見てきた世界中の話を聞いた。もらっ韓国のタバコが美味しかった。彼女たちとはソウルで再会して、案内してもらった。辛い韓国料理が食べたいとお願いして連れて行ってくれたお店はまじで辛くて、食べるのがきつかった。でもあんなに可愛い子たちなのにそれを平気な顔して食べていたのが思い出。この写真はソウルの公園で撮った。
・ブラジルからの日系人
日本に留学していて、東京に遊びに来た人。初めて日系人に会って、日本語で話ができたのが楽しかった。ブラジルの日系社会について、日本に来てみて思うこと、人種のこと、国籍のこと、聞きにくいことも話してくれた。好きな本の話になって、俺の知らない古い作家ばかり挙げていた。日本語の授業で扱ったものだという。もうかなり古い作品も、文化の流れが違う日系社会では未だ現役だということに驚いた。
書ききれないけど、こんな感じ。
ゲストとしてカウチサーフィンでイランで泊まってみた
イランのテヘランに行った時に、カウチサーフィンで探した夫婦の家に泊まった。そもそもホストが少ない国なので受け入れてくれる人はすぐ見つかった。一般社会からは少し距離感のあるイラン。そんな国での生活が見てみたかった。
ホストは有料会員で、過去の評価を見て決めた。この2点さえ見ていれば外すことはない。あとは布団で寝れて、Wi-Fiがあるところを選んだ。
正直、家の立地が少し悪かったが、ホテル代の高いテヘランではとても助かった。年の変わらないイラン人の青年がどんなことを考えているのかが知れてよかった。東京や日本のことをたくさん聞いてくれたり、逆にイランのことを聞いて嫌な顔せず答えてくれたり。印象に残っているのはネット規制のあるイランでVPN接続をしてたくさんの情報を得ていたことだった。その上で、彼は自分の考え方を持ってその国の政治や自分の将来を考えていた。家の中や生活スタイル、食べ物も普段が知れて楽しかった。
面倒だったのは、やはり家の立地と、時間の融通が効かなかったこと。立地が悪く、観光に行きにくかったし、移動に時間がかかった。夫婦の生活時間に合わせないといけなかったので家を出る時間や帰る時間を予め決めておかなきゃいけないのはちょっと面倒だったかな。
さいごに
注意すべきことはあっても、カウチサーフィンは楽しい。ただ、危険なことも十分あるサービスなので注意して使おう。ホストとしてもゲストとしても普通の旅行では味わえない、より深い旅ができるよ。