サスティナブルな観光を体験できるアクティビティが楽しめる阿蘇の草原
1000年以上前から人間と自然が共生する草原として有名な阿蘇。現在でも野焼きを毎年行い、人の手と自然の循環によって美しい草原を維持している。熊本県と⼤分県にまたがる、「阿蘇くじゅう国⽴公園」の大部分を阿蘇が占めており、世界的に見ても珍しい巨大なカルデラにある街は景観が特徴的で、木がほとんど生えていない丘は海外のようだ。
野焼きや牛の放牧など、どのようにして草原が循環しているのかを知り、未来に受け継ぎたい美しい景色を深く体験できる体験型旅行のアクティビティに参加してきた。
まずは阿蘇くまもと空港へ。バスで阿蘇駅に向かう。
空港は机が多く、搭乗口が近いので使いやすい。
コンビニもある。
阿蘇くまもと空港は電車がないのでバスやレンタカーで移動する。
阿蘇駅に向かうバスを探す。なぜか熊本駅のバスターミナル案内などがあり、最初迷った。
阿蘇駅は3番のりばから大分行き「特急やまびこ号」に乗る。本数は1日5本程度なので事前にスケジュールは要確認。阿蘇駅までは1220円ほど。現金、ペイペイ、交通系ICカードが使える。予約乗車優先だが、今回は予約なしで余裕で乗れた。
カルデラを形成する外壁にあたる外輪山の長いトンネルを抜けると阿蘇のカルデラ内に入る。カルデラ内とは思えないほど広大な景色。木の生えていない草原の丘が印象的だ。太古はカルデラ湖だった大地なので平坦で広い景色が気持ち良い。
阿蘇駅までは約1時間。阿蘇の山々が美しい。
阿蘇駅に到着。道の駅で阿蘇ミルクを購入。
阿蘇駅に到着。火山や温泉が豊富な熊本は「火の国」としてワンピースとコラボしていて、各地にキャラクターの銅像が立っている。
阿蘇駅にはウソップ。記念撮影をしている人が多かった。
道の駅には特産品が多い。野菜などがたくさん売られており、立ち寄る観光客で賑わっていた。
観光案内所もある。パンフレットなどがもらえる。特に阿蘇は地形が面白いので地図をもらうのがオススメ。
阿蘇といえば牛のイメージがあり、放牧されてのびのび育った乳牛が阿蘇ミルク牧場で飼育されている。阿蘇ミルクは牛乳の味の印象が変わるほど美味しかった。
野焼きの情報展示がある阿蘇草原保全活動センター
阿蘇草原保全活動センターへ車で移動。
ここは阿蘇の草原の保全活動の展示やアクティビティなどを体験できる拠点。ワーケーション施設も併設している。
野焼き時の服装や阿蘇の土地の特徴などがまとめられている。
小学生などの自然教育も行われている。生徒の声で「うちでも馬を飼っている」と書かれていて、東京で育った自分からするとびっくり。さすが馬や牛と共生している阿蘇ならではだ。
毎年行われている野焼きのボランティアスタッフ募集。有料で複数回の参加が必要だが、とても貴重な体験ができるので県外からの参加者も多いそうだ。
一番右の「阿蘇のものしりブック」がわかりやすく、詳しいのでオススメ。
ビデオ放映がある。約10分の動画が2本。どちらも野焼きの映像や昔の写真などが紹介されていて見ていて楽しかった。これを見てから阿蘇を観光すると、より深く土地のことが理解できる。
ガイドさんと合流。今回はイギリスからの旅行客もいて、英語での案内だった。通訳案内士のレベルの高い英語ガイドも対応可能。
パノラマ模型を使って、阿蘇のカルデラなど地形について紹介をしてもらった。
イーバイクで阿蘇の外輪山を駆け上がる!
まずは最初のアクティビティ。電動アシスト付きのE-BIKEで外輪山の上部を目指す。E-BIKEは電動アシスト付きの普通の自転車に比べて、アシスト力が高く、坂道でも軽々走ることができる。E-MTB(電動アシストマウンテンバイク)とも表記される。今回の参加者にはシニア層の参加者もいたが、体力的にも問題なかった。約10キロの行程。まずはE-BIKEの使用方法についてレクチャーを受ける。
阿蘇山で遊びたいなら『あそBe隊』へ!アクティビティプロガイドとの貴重なアウトドア体験が待っています!
阿蘇草原保全活動センターからスタート。天気が良くて気持ち良い。
外輪山の麓に入り、林道を進む。きつい坂道でもイーバイクだとすごく楽でびっくり。
森林を抜けると草原地帯へ。このあたりは野焼きの手入れがされているエリアで、まさに阿蘇の草原!という景色。車では通れない草原の中腹を、特別な許可を得て自転車で進むのは貴重な体験だ。
外輪山はカルデラから約500m高いので、坂が急だったが、イーバイクだとスイスイ進む。あっという間に景色が遠くに。
外輪山の上部を走るミルクロードに出る。車で通る人は多いが、ここを自転車で走るのが素敵。以前、車で通ったことがあるが、自転車で走ったほうが断然楽しかった。
ツアーでしか入れない扇谷展望台へ。ベンチが用意されていて、絶景の休憩スポット。阿蘇ミルク牧場のヨーグルトを頂く。
夜のバーベキューをするオートキャンプ場 遊牧民を目指す。車道ではツアー運営者の車が後方からサポートしてくれるので、他の車の追い越しも怖くない。
ここを走っている時、あまりの気持ちよさに声が出た。あー、気持ちいい~~。
草原は紅葉はしないが、黄金に輝いていた。阿蘇ならではの秋の景色。
休憩をはさみながら約2時間ほどの行程でオートキャンプ場 遊牧民に到着。500mの山を自転車で登って約10キロ移動したとは思えないほど、楽だった。イーバイクすごい。
古いGoProで手ブレがひどい。阿蘇の旅行が終わって、この動画を見返した時にGoPro4の限界を感じ、最新のGoPro11を買いました。
オートキャンプ場 遊牧民であか牛のバーベキュー。夜は満天の星空。
キャンプ場に到着。バイオトイレもあり、手入れが行き届いているキャンプ場だった。
阿蘇スカイラインオートキャンプ場 遊牧民(阿蘇市)|OK CAMP
休憩も兼ねてハーブティーを頂く。阿蘇の湧き水で淹れてくれた。
夕日を見に周辺を散策。
枯れ草を取って、この後火を起こす。
川もあった。火山が噴火した時にできた地形なので、岩の形が不思議で面白かった。普通の岩場では見ないようなクラックや亀裂、割れ方、石の形をしていた。
枯れ草を集めて、火打ち石で火を起こす。インストラクターが見本を見せてくれて、各自で挑戦。簡単そうに見えたけど、自分でやってみると難しい。
無事に火をつけることができた。火打ち石で火をつけたのは初めて。簡単にライターで火をつけるよりも思い出になる。
日が暮れてきた。11月でも夜は0度近くなる日もあり、防寒対策は必須。ダウンブランケットなどの貸出もあり。準備、調理、片付けもスタッフチームが行ってくれるので、手ぶらで気軽に参加できる。
阿蘇の草原で放牧されている「あか牛」を炭火で焼いて頂く。
柔らかく、ほぼ何も調味料をつけなくても味がしっかりしたあか牛はすごく美味しかった。参加したイギリス人観光客も絶賛していた。私もおかわりを何度もするほど美味しかった。
阿蘇のクラフトビールも飲める。
阿蘇のバーベキューでは油揚げが出てくる。昔の放牧時代に野原でご飯を食べる時の習慣で油揚げや魚を串に挿して焚き火で焼いて食べていたそうだ。
ゆったりとした時間が流れる。熊本で生産されている焼酎やウイスキーも頂いた。
標高が高く、気温も低いので満天の星空。久しぶりに天の川を見た。しかもなんとこの日は皆既月食だった。
国立天文台が撮影した2022年11月8日の皆既月食と天王星食 | 国立天文台(NAOJ)
皆既月食の始まり。椅子を草原に並べてゆっくり月と星を眺める至福の時間。
月食の最大。完全に赤い月になった。偶然とはいえ、皆既月食を観測するには最高のロケーション。
阿蘇で星と月を見れて良い思い出になった。
宿泊は阿蘇の司ビラパークホテル&スパリゾート。
BBQを終えて、ホテルにチェックイン。
【公式】阿蘇温泉 露天風呂が有る阿蘇の司ビラパークホテル&スパリゾート|ベストレート保証
この宿にいた温泉むすめは「阿蘇 ほむら」。
温泉は2箇所。朝に入った展望風呂から見る外輪山がキレイだった。
実は阿蘇は雲海の聖地の1つ。そらふねの桟橋へ。
行くまで知らなかったが、阿蘇は雲海が見えやすい場所の1つ。雲海、と聞くと北海道が第一印象だが、阿蘇はカルデラの外輪山に囲まれているため、風が安定しやすく、雨が多いので雲の発生率も高いそうだ。見れる期間が長く、晩夏~初冬にかけて発生する。朝6時ごろホテルを出発。
雲海を見る最高のスポット「そらふねの桟橋」に到着。
【南小国町から30分!】阿蘇市内牧温泉の新スポット!田子山展望所(たんごやま)・そらふねの桟橋のご紹介。 | SMO南小国
外輪山は「入会地」といわれる地元農家が共同で管理している土地が多い。ここも入会地らしいが、地元の方々がテラスや桟橋などを作って、雲海を楽しませてくれている。
雲海はばっちり。かなり広範囲に雲がかかっている。
桟橋の雰囲気もかなり良くて、一番先から見下ろす景色があまりに素晴らしかったので、ずっといたかった。阿蘇は日本一の雲海スポットかもしれない。
高い建物が見え隠れするのも幻想的。風がほぼ無風なので雲が層になっていてはっきりと線で分かれているのが印象的。気球の係留飛行も見えた。
三脚をかかえたカメラマンも多かったが、マナーが良く、譲り合って見ることができた。ベンチが3つくらいある。昨夜のバーベキューと同じでかなり寒いので防寒必須。ガイドさんがコーヒーと紅茶を持ってきてくれた。雲海と日の出を見ながら飲む熱いコーヒーは美味しかった。
日の出前の雲海は静かで青く、本当に夜の海のようだった。日が出てからは雲が赤く染まり、幻想的な風景。
個人的には日が出た後の景色の方が綺麗で印象に残った。重なる雲の畝に太陽の光があたり、濃淡のグラデーションが美しい。次回は準備をもっとしてきて、日の出前から雲海が消える8~9時ごろまで長く滞在してみたい。
そらふねの桟橋には駐車場があり、桟橋までは徒歩5分ほど。駐車料金は200円。入会地を開放してくれているので、しっかり払おう。トイレあり。管理グループの遊び心でゲームができる謎の機械があり、これに駐車料金を入れる。残念ながら、訪問時は故障中。謎のカードとかがもらえるらしい。めっちゃやってみたい。
大観峰からパラグライダーで飛ぶ!阿蘇の大景観を独り占め。
次は大観峰からパラグライダー飛行の体験。パラグライダーのインストラクターとタンデム飛行になる。体験飛行だけなら日本どこでもできるが、飛んでみて感じたのは阿蘇は外輪山に囲まれているだけあって、景色が広大。他の山々とは違った雰囲気が楽しい。上昇気流の調子が良いと外輪山より高度を上げることができるらしいが、今回はできなかった。上からの景色はもっとすごそう!
みさえって阿蘇出身なんだ!知らなかった。
大観峰は外輪山の中でも一番の観光地。ひっきりなしに人が来る。
斜面でパラグライダーの準備。斜面を駆け下り、飛ぶ。この日は風がちょうどよく、驚くほど安定した飛行だった。ほぼ揺れることがなく、空を滑っているかのような感覚は忘れられない。
今回は特別に飛行中に撮影をさせていただいた。
今回のフライトは飛行してそのままカルデラの原っぱに降りた。大観峰に車で戻る間に、パラグライダーについて色々教えてもらった。
馬にのって草原をゆったり楽しむ乗馬体験。
ウエスタンな雰囲気が素敵な乗馬 クラブ 夢・大地グリーンバレーにて乗馬体験。おとなしい馬で、乗馬初体験でも問題なく進む。観光地でもなく、道でもない、本当に草原の真ん中で草をかき分けながら進むのが非日常感があって楽しかった。草の中から見える景色は車道や展望台とは違って、地に足がついた感じがあって、昔の草原の手入れをしていた人たちの見ていた景色に思いを馳せた。
外輪山をドライブしていても、草原の中に入れる場所はほぼない。イーバイクや乗馬で草原の真ん中を移動するのは、阿蘇の草原をより一層感じられるアクティビティなので是非。ドライブだけで帰ってしまう観光客よりも何倍も草原の魅力を味わうことができる。
阿蘇乗馬クラブ 夢・大地グリーンバレー‐見渡す限りの大草原で優しい馬たちと楽しいひととき-
乗馬中は撮影できず、固定したGoProのみで撮影。
草原の丘で伝統的なお昼ごはん。草原の手入れの話や体験も。
見晴らしの良い丘に移動。ここも入会地なのでツアーでないと入れない。
車道からも離れていて喧騒もなく、ずっといたくなるような静かな景色だった。
昔から草原の手入れや放牧などをしている地元の方々が参加してくれて、話を伺うことが出来た。
お昼ごはんは地元のお母さんたちが作ってくれた伝統的なお弁当。地元で取れる植物や野菜をつかった日本料理。
乗馬クラブの方々も来てくれた。馬に乗って丘まで来てくれてカッコよかった。
機械や車が入る前、人が手作業で草原の手入れをしていた時代の方法を教えてもらう。藁で紐をつくって束ねる方法など、実際に教えてもらった。これも簡単そうに見えて上手くできない。何事も実際にやってみるのは大事なことだ。
別の場所で見せてもらった、藁で出来た簡易テント。「草泊まり」という物で、人の手で草原を手入れしていた時は泊まり込みで作業をしていたそうだ。牛を連れて麓の村に歩いて帰るだけで1日かかるので、交代などで数日~1週間ほど泊まっていたそうだ。この話を聞くまで、車で30分くらいで外輪山まで来ていたので距離感や広さを実感することがなく、「そうか、昔は歩いていたのか」と手入れの大変さを認識した。
ちなみに昔の笑い話や噂では、新婚は草泊まりに行くのを勧められることが多かったそうで、阿蘇には8月生まれの子供が多いとか。土地に根付いた歴史と人の営みが自然のサイクルと共に生きているような素敵な話だと、個人的には思った。そういう話が地元の爺ちゃんから聞けるのは面白かったな。
ドライブだけではもったいない!阿蘇の草原は中に入ってこそ魅力的。
数年前に、阿蘇をドライブした時は「草原がとても綺麗だ!」と思った。車窓や展望台からの景色は十分心に残る綺麗な景観だったが、今回のツアーに参加して、阿蘇の魅力はもっと深かったと実感した。
特にイーバイクや乗馬などの移動手段を変えて見る阿蘇の草原や、ドライブでは立ち入れない草原の真ん中から見た景色は本当に美しかった。夜になると人がいなくなる外輪山で満天の星空を見れたのも印象的。普通の観光では見ることができない景色を、たくさん見ることができ、草原の魅力を味わうことのできるツアーだった。そして美しい草原はずっと人が管理をしている。人と自然のサイクルで出来たサスティナブルな景観であることも学んだ。こういった草原の観光がより深まると、将来への草原の保全にもつながる。阿蘇に立ち寄る際は是非。