
ロンドンでアーセナルのスタジアムツアー(エミレーツ・スタジアム)に行ってきた。自分が行ったときは1人7,100円くらいで、セルフガイド形式。オーディオガイドを借りて、自分のペースで好きな順番で回れるタイプだった。ガイドに急かされないので、写真を撮ったり、展示の前で止まったり、同じ場所をもう一回見たりできる。ひとりで行っても全然気まずくないし、むしろ相性がいい。
結論から言うと、エミレーツのツアーだけでも十分楽しい。ただ、旧スタジアムのハイバリー跡地(Highbury Square)を先に見てからツアーに行くと、移転が「地続き」だったことを体感できて、満足度が一段上がる。今回のロンドン滞在でスタジアム系はいくつか回ったが、アーセナルは“過去と現在を徒歩でつなげる”のが良い。
アーセナル駅が降りた瞬間から住宅街で、そこにクラブの歴史を感じられる

アーセナル駅はロンドン中心部からのアクセスが良い。駅を出るとすぐに観光地っぽさが薄れて、普通の住宅街の空気になる。そこがまず面白い。派手な商業施設に囲まれたスタジアムというより、クラブが生活圏の中に根付いている感じがする。
今回は朝8時くらいに到着して、まず旧ハイバリーへ向かった。ツアー開始まで時間があるときは、この動き方がちょうどいい。ハイバリー跡地を見て、そこから歩いてエミレーツに行く。距離も近いので、無理なく1日でまとめられる。
旧ハイバリー跡地は、スタジアムが“住む場所”になっている。ピッチが芝生の庭として残ってるのが衝撃

ハイバリーは、アーセナルが長年本拠地として使っていた旧スタジアムで、現在は住宅として再開発されている。実際に行ってみると、想像よりも「残ってる」。完全に別物になっているというより、要所要所にスタジアムの雰囲気が残っていて、それが生活空間に馴染んでいる感じがある。
特に印象に残ったのは、ピッチだった場所が芝生の広場(庭)として残っていること。外から見るだけでも「あ、ここがピッチだったんだな」というのが分かるし、建物に囲まれた形になるので、サッカーコートが意外と小さく感じる瞬間がある。周囲がスタンドではなく“建物の壁”になることで、ピッチのサイズ感が急にリアルになる。

そして、スタンドや屋根のラインっぽい部分が残っていたり、細部にスタジアムっぽさがあったりする。自分は「ここまで残すのか」と思った。日本だと、スタジアム跡地がこういう形で住宅になって、しかも“記憶が残る設計”になるのはあまり想像できない。聖地巡礼というより、都市が歴史をどう残すかを見る体験でもあった。

自分が行ったときは住民の方が中に入れてくれた。アーセナルのファンだろ、と声をかけられて、ピッチだった場所をかなり近い距離で見られた。もちろん常に同じ状況とは限らないし、無理に入ろうとするのは違う。ただ、外周を歩くだけでも十分に面白い。
ハイバリーからエミレーツへ歩く

旧ハイバリーからエミレーツまでは歩いてすぐ。これが本当に良い。移転って、別の街に飛ぶイメージがあるけど、アーセナルは“生活圏の中で少し場所がずれた”くらいの感覚でつながっている。旧ハイバリーで過去を見て、そのまま徒歩で現在に行く。これだけで、クラブの時間の流れが理解できる。

ロンドンだと、フルハムのクレイブン・コテージでも「住宅街のど真ん中にスタジアムあるのか」と驚いたが、アーセナルは旧スタジアム跡地でも同じ驚きをもう一回味わえる。
ツアー前に公式ショップ「The Armoury」を見ておく。最近のクラブは“街着”に本気
エミレーツに着いたら、まずメインの公式ショップ「The Armoury(アーモリー)」を見た。ショップ内は動画撮影が禁止で、写真はOKだった。

ここで感じたのは、ユニフォームや応援グッズだけじゃなく、日常で着られる服にかなり力を入れていること。胸元にエンブレムだけ入ったシンプルな服、帽子も「言われないとアーセナルって分からない」ようなものがある。こういうのは普段使いしやすいし、現地の人が普通に着る理由も分かる。
それと、コラボっぽいデザインの服も多かった。サッカーとは関係ないようなグラフィックだったり、クラブを前面に出さないデザインだったり。最近のクラブの流れとして、カジュアルウェアはどこも力を入れているが、アーセナルも例外じゃなかった。

値段感は自分が見た範囲だと、パーカーで1万3,000〜1万4,000円くらい。ヴィンテージっぽいドリルトップ(スモック的なやつ)も同じくらいのゾーン。マフラーは種類が多く、6,000円いかないくらいのものもあった。逆にコラボっぽいラインは一気に上がって3万6,000〜3万7,000円くらい。現地価格で見ても安いとは言いにくいが、「クラブ公式のファッションライン」として見ると納得感はある。
ショップのスタッフがやたらフレンドリーだったのも印象に残っている。売り場の空気が堅くない。
スタジアムツアーはセルフガイド+日本語オーディオ

ツアーはセルフガイドで、受付でイヤホンを受け取ってオーディオガイドを使いながら進む。日本語対応があるのは助かる。細かい説明が入るタイプなので、英語だけだと流し見になりやすいが、日本語だと理解しやすくて満足度が上がる。
セルフガイドの一番の良さは、見たい場所で止まれること。写真撮影って、どうしても時間がかかる。団体ツアーだと置いていかれるが、セルフならそれがない。自分は基本的に写真を撮りながらゆっくり回りたいので、この形式はかなり合っていた。
ここから裏側へ。選手の導線が見えると、スタジアムの見え方が変わる
ツアーは駐車場側からスタートだった。ここから「選手がバスで入ってくる」導線を想像できる。観客席から見るスタジアムは“表”だが、裏側に回ると運用が見える。ここがスタジアムツアーの一番の価値だと思う。
入口付近には、ハイバリーの時計(ハイバリー・クロック)をモチーフにした要素があったり、アールデコ調の木製レイアウトがあったりして、旧ハイバリーの意匠を今のスタジアムにも持ち込んでいるのが分かる。旧ハイバリーを先に見ておくと、ここでの気づきが増える。
入口にはタイムカプセルの展示もあった。中に多数のアイテムが入っている、という説明があり、写真や当時のブーツ、シャツなどクラブの記憶を保存する仕掛けになっている。
ロッカールーム(ホーム/アウェー)の差が分かりやすい

ホームチーム側のロッカールームは、いかにも試合前の準備の場所という感じで、簡単なミーティングをするイメージが湧く。メディカル系の部屋(マッサージルームっぽい場所)やシャワールームがあり、体を冷やす設備もあった。トイレも含めて導線がまとまっていて、試合の“仕事場”という雰囲気がある。
個人的に面白かったのは、ウォームアップのルールが掲示板に貼ってあったこと。ピッチのどこで、どのタイミングで、何分前にどう動く、みたいな運用の細かさが見える。こういうのは映像では見えないので、ツアーの価値がある部分だと思う。

アウェーチーム側のロッカールームは、ホームと比べると質素で狭い。シャワールームも小さく、作りが違う。さらに、座る位置関係の話も面白かった。ロッカーの配置がそのままだと、向かいの選手の顔が見えづらくなってコミュニケーションが取りづらいから、わざと真ん中に棚を置いている、という説明があった。こういう“相手のやりやすさを減らす設計”が現実に存在するんだなと思った。
プレイヤーズトンネル!ここを歩くとテンションが上がる

次にプレイヤーズトンネルへ。ここはやはりテンションが上がる。試合中継で見た場所を、自分の足で通るだけで価値がある。スタジアムツアーの“ご褒美”みたいな場所である。ただ、この日はここから雨が強くなってきた。ロンドンの天気は読みづらいし、晴れていても急に来る。
雨でベンチが閉鎖。天気次第で見ることができない可能性がある

ピッチサイドに出たところで、普段は座れるはずのチームベンチのシートが、雨で閉鎖されていた。これは残念だった。普通なら座って写真を撮る人が多いと思うし、ここはツアーのハイライトになりやすい場所だからだ。

一方で、ピッチにピンクのライトが当たっていて、芝の修復や育成のための設備だろうな、という景色も見られた。雨の日だからこその現場感はあったが、やはりベンチに座れないのは痛い。写真を狙う人は、できれば天気のいい日を当てたい。
メディアエリアでそれっぽい写真が撮れる(笑)

メディア関連のエリアも回れる。ここは想像していたよりも“部屋が小さくて、数が多い”タイプだった。自分のメモではインタビュールームが12個ある、という説明だった。まとめて大部屋がドン、というより、用途ごとに小さく分かれている感じ。
ユナイテッドのツアーだと撮影の制限が強い場所もあったが、アーセナルは比較的自由に写真を撮れる空気だった。こういう差は行ってみないと分からない。
スタジアムの持ち込みルール。バッグは小さめが前提で、飲み物は要注意
スタジアムには持ち込めるもの/持ち込めないものの掲示がある。自分が見た内容だと、バッグはA4より小さいサイズが基本。ペットボトルや水筒は「空ならOK」で、中身入りはNG。飲み物、香水、アルコール、缶、大きい傘などは持ち込み不可、という整理だった。
試合観戦のときも似たルールだが、ツアーだからと油断すると引っかかる可能性がある。変に荷物を持たずに行くのが一番ラクである。
ツアーの後はアーセナルミュージアムへ

ツアーのあるショップの反対側にあるミュージアムにも入った。ツアー参加者は入れるので、時間があるなら必ず行ったほうがいい。スタジアムの裏側を見たあとに歴史展示を見ると、「今のクラブ」と「昔のクラブ」がつながる。
入口にはベンゲルの像がある。スーツとネクタイのイメージそのままで、存在感がある。ベンゲルは歴代監督の中でも象徴的な存在なので、ここに像があるのは納得感がある。
アーセナルの起源は“軍需工場の労働者チーム”。だから大砲のエンブレムで、ガナーズと呼ばれる

ミュージアムの歴史パートで整理されているのが、アーセナルの成り立ちだ。クラブは1886年に、ウールウィッチの軍需工場(ロイヤル・アーセナル)で働く人々によって作られた、という起源を持つ。最初期のチーム名がいくつかあり、そこから現在のアーセナルにつながる流れが説明されている。
ここを押さえると、エンブレムに大砲がある理由や、“Gunners(ガナーズ)”と呼ばれる背景が腑に落ちる。単なるデザインではなく、クラブの職業的ルーツがそのまま記号になっている。
ハイバリー(1913〜2006)の展示が、跡地を見た直後だと印象深い

ハイバリーは1913年から2006年まで使われていた。ミュージアムには当時の写真や資料があり、さらに「ハイバリー最後の試合の芝」が展示されている。自分は日韓ワールドカップの決勝の芝を日本の施設で見たことがあったが、芝ってこういう形で“記憶の物体”になり得るんだなと思った。
そして、ハイバリーの写真を見ると、さっき歩いてきたHighbury Squareの構造が頭の中でつながる。「この屋根が残ってた」「このスタンドが今は建物になってる」みたいに、現地の体験を展示が補強してくれる。この流れがあるから、旧ハイバリー→エミレーツ→ミュージアムの順が綺麗だと思う。
ユニフォーム展示が普通に面白い。古着好きは細部が見れて興奮する

ミュージアムは歴史の文章展示だけじゃなく、ユニフォームやトラックスーツなど“物”の展示がしっかりある。古いユニフォームは素材や縫製、ボタンの使い方が今と全然違っていて、服として見ても面白い。

自分が印象に残ったのは、1930年代のユニフォームのディテール。シェルボタンが付いていたり、縫い目のピッチが細かったり、薄い生地感だったりして、ヴィンテージシャツの作りと同じ方向性がある。サッカーユニフォームってスポーツウェアのイメージが強いが、昔のものは“服としての作り”がかなり出ている。

年代が進むと、70年代のトラックスーツや、ジッパー、タグなどが見えてきて、ヴィンテージの見方がそのまま使える。90年代以降は自分の記憶とも接続しやすく、展示を見ながら「あの頃のアーセナルってこうだったよな」と自然に思い出せる。
まとめ:旧ハイバリー跡地→エミレーツツアー→ミュージアムがベスト

アーセナルのスタジアムツアーは、セルフガイドで自由度が高く、日本語オーディオもあるので、ひとりで回るのに向いている。裏側の導線、ロッカールームの差、運用の掲示物、メディアエリアなど、観戦では絶対に見えない部分が見られる。
そこに旧ハイバリー跡地を足すと、クラブの時間の流れが体感として入ってくる。あのピッチが庭になり、スタンドの意匠が住宅に残り、そこから歩いて今のスタジアムに行ける。これはアーセナルならではの面白さだと思う。
注意点は天気。雨の日だとベンチ周りが閉鎖される可能性があるので、写真を狙う人はできるだけ天気のいい日に行きたい。ただ、屋内だけでも見どころは多いし、ミュージアムまで含めれば十分満足できる内容だった。